大判例

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東京地方裁判所 平成9年(行ウ)18号 判決

原告

市川角太郎(X)

右訴訟代理人弁護士

佐竹俊之

被告

清瀬市長(Y) 星野繁

右訴訟代理人弁護士

関根靖弘

稲益和子

事実及び理由

第三 当裁判所の判断

一  本件要望調書作成等の経緯

〔証拠略〕によれば、次の各事実が認められる。

1  昭和五〇年代当初、清瀬市において、西武池袋線清瀬駅北口地区及び同線秋津駅周辺地区について整備・再開発の機運が高まり、同市は、昭和五一年度に、右両地区について市街地再開発等の調査を実施し、さらに、昭和五二年七月、右両地区についてそれぞれ「まちづくり研究協議会」と称する地元協議会を組織し、再開発についての勉強会を開始した。

2  清瀬市は、昭和五四年九月、秋津駅南口地区を再開発の先行地区とすることを決定し、同年一〇月、「新しいまちをみんなの手でNo4」と題する冊子を作成して本件再開発事業に係るモデルプランを発表し、同年一二月から昭和五五年二月にかけて、現況測量や住民の意向調査を行った。また、清瀬市は、同月から同年七月にかけて、秋津駅周辺に多くの土地を所有していた原告の依頼した代理人との間で、右のモデルプランについて協議を行った。

3  清瀬市は、昭和五五年六月、企画部長名義で、本件再開発事業に係る調査費等について国庫補助金の交付を要望する内容の昭和五六年度の国庫補助金要望調書(本件要望調書)を、本件再開発事業の計画の概要を示す計画図等を添付した上で四部作成し、そのうち三部を東京都に提出し(ただし、そのうち二部は建設省提出用のものである。)、一部を同市の手元控えとして再開発課において保管した。

4  清瀬市は、昭和五五年七月、本件再開発事業に係る同市のモデルプランに基づく駅前広場や道路の都市計画案を同市都市計画審議会に付議したが、秋津駅周辺の大地主で同審議会の委員でもあった原告の賛同が得られず、右都市計画案は承認されなかった。このため、清瀬市においては、本件再開発事業の計画案の大幅な見直しを行う必要が生じ、そこで、同年一〇月一五日、企画部長ほか二名が東京部都市計画局開発部に出向いて、右の事情を説明し、本件要望調書に係る昭和五六年度の国庫補助金の申請をする予定はなくなった旨先方に伝え、同年度における右国庫補助金の申請をしなかった。

5  清瀬市は、その後も、本件再開発事業の施行に向けて、原告を含む地権者らと協議を行ったが、本件再開発事業の施行方法や施行者等についての合意形成ができなかったため、昭和五七年一二月をもって本件再開発事業を留保することを決定し、現在に至っている。

二  本件要望調書等の存否について

1  右一で認定したとおり、本件要望調書は、本件再開発事業に係る国庫補助金要望調書として作成されたものであるところ、本件再開発事業は昭和五七年一二月をもって留保の決定がされた後、現在に至っているものである。また、前記第二の二5で認定したとおり、本件要望調書については、本件規定により保存文書に関し作成が義務付けられていた保存文書登録台帳ないしは廃棄文書目録は作成されていないものである。さらに、〔証拠略〕によれば、再開発課においては、昭和五二年に作成された本件再開発事業に係る調査報告書(〔証拠略〕)や昭和五四年に作成された「新しいまちをみんなの手でNo4」と題する冊子(〔証拠略〕)など本件再開発事業に関する過去の文書を、庶務課に引き渡すことなく保管していることが認められる。

これらの事実に照らすと、原告の主張するとおり、本件要望調書等は、いまだ完結文書としては扱われず、本件再開発事業に係る一連の文書の一部として再開発課において保管されていると推認することには一応の合理的な根拠があるものといえなくもない。

2  これに対し、被告は、本件要望調書等は、昭和五五年六月に東京都へ提出した時点で完結文書となり、以後、再開発課において昭和五五年完結の三年保存用簿冊に他の文書と共に編てつして保管した上、庶務課に引き渡されることなく、保存期間である三年間の満了した翌年の昭和五九年に焼却廃棄されたものと考えられる旨、また、清瀬市においては本件条例を施行する準備として、公開対象文書の整理を行い、再開発課においても平成四年度以降整理を行ったが、本件要望調書等は存在しなかった旨主張し、本件要望調書が作成された当時、再開発課再開発担当主査の職にあり、現在企画部長の職にある石津省次は、右主張に沿う陳述書(〔証拠略〕)を作成し、当裁判所において証人としてこれと同趣旨の証言(以下、右の陳述書の記載内容と併せて「石津供述」という。)をしているところである。

3  石津供述によれば、再開発課における本件要望調書等の保存・廃棄は、本件規定の定めるところに従って行われていなかったことになるが、地方公共団体における文書の管理が、常に当該地方公共団体の文書管理規程どおりに行われているという保証はないのであって、石津供述が、この点において、経験則に反する不合理な供述ということはできない。

また、再開発事業に対する国庫補助金要望調書は、建設省において、再開発事業に対する国庫補助金の予算獲得のための基礎資料とする目的で、地方公共団体に対し提出を求めている文書であって、これを受けて、国庫補助金交付の内示があった場合には、改めて国庫補助金の交付申請書が提出されるものであり、かかる国庫補助金要望調書の提出目的及び性格からすると、過去に提出された国庫補助金要望調書の内容がその後に提出される国庫補助金要望調書の内容に直接影響を与えるものとは解されない。加えて、清瀬市においては、本件再開発事業に係る同市のモデルプランに基づく駅前広場や道路の都市計画案について同市都市計画審議会の承認が得られなかったことから、本件要望調書に係る昭和五六年度の国庫補助金の申請を行わなかったことは、前記一4で認定したとおりであり、これらの点に照らすと、本件要望調書が東京都に提出された昭和五五年六月に直ちに完結文書として扱われたか否かはともかく、遅くとも、本件要望調書に係る国庫補助金の申請を行わないことが推定した同年一〇月一八日の時点で再開発課において本件要望調書を完結文書として扱ったものとしても、不合理ということはできない。

さらに、再開発課において、昭和五二年に作成された本件再開発事業に係る調査報告書や昭和五四年に作成された「新しいまちをみんなの手でNo4」と題する冊子などを庶務課に引き渡すことなく保管していることは、前記1で認定したとおりであるが、これらの文書は、その文書の性質上、本件再開発事業に関する資料として同課において保管しておく価値のある文書ということができ、これらの文書と、前示のような提出目的、性格を有する国庫補助金要望調書であり、しかも、それに係る国庫補助金の申請が実際に行われなかった本件要望調書を同列に扱うことはできないのであって、右調査報告書等が庶務課に引き渡されることなく再開発課において保管されているからといって、直ちに本件要望調書等についても同課において保管されているということはできないものである。

石津供述は、本件規程に従わない再開発課のずさんな文書管理を前提とし、石津証人の推測を交えたものであって、これにより、本件要望調書等が被告の主張するとおりの経過により廃棄されたものと直ちに認定することは困難であるが、右に検討したところによれば、右供述が経験則や客観的な証拠に反するものということはできず、同証人が推測として供述するところの、本件要望調書等が保存期間の経過により廃棄されたとの事実は、あり得ることと考えられる。

4  以上のほか、本件開示請求がされた時点において、清瀬市が本件要望調書に係る国庫補助金の申請を行わないことが確定した時から既に一五年以上が経過している点をも考えると、前記1で指摘した事実があるからといって、原告の主張するように、本件要望調書等が再開発課に保管され、存在しているものと推認することはできず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

第四 結論

そうすると、本件開示請求に係る文書が不存在であることを理由として、これらを開示しないこととした本件非開示決定が違法であるということはできず、原告の本件請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 青栁馨 裁判官 増田稔 篠田賢治)

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